ケトン体への誤解

ケトン体への誤解

 

アセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸、アセトンを総称してケトン体といいます。 尿検査で検出されるのは主にアセト酢酸です。

 

ケトン体は糖尿病でインスリンの不足によりブドウ糖を利用できなくなってしまい、しかたなく脂肪を分解してケトン体つくりエネルギー源とした場合、ブドウ糖もできてしまうのでますます血糖値が上昇しています。

そのようなことからケトンは悪者の指標とされてきました。

 

しかし近年の研究ではケトジェニックダイエットのようにケトンが注目されています。

 

1. ブドウ糖のエネルギー効率

  • 代謝経路: ブドウ糖は解糖系(細胞質内での代謝)とクエン酸回路(ミトコンドリアでの代謝)を通じてエネルギーを生産します。
  • エネルギー産生: 1分子のブドウ糖から最大38分子のATP(アデノシン三リン酸)が生成されます。
  • 効率の特徴:
    • 短時間でエネルギーを供給する能力が高い(速効性)。
    • 無酸素状態(解糖系のみ)でもエネルギーを生産可能。
    • 長時間の持久運動には不向き(糖のストックは限られるため)

 

2. ケトン体のエネルギー効率

  • 代謝経路: ケトン体(β-ヒドロキシ酪酸、アセト酢酸など)はミトコンドリアで酸化され、クエン酸回路に入ります。
  • エネルギー産生: ケトン体1分子から最大21.5 ATPが生成されますが、脂肪酸由来の効率を含めると持続性が高いです。
  • 効率の特徴:
    • 持続性に優れる: 脂肪が無尽蔵のエネルギー源として利用できるため、長時間のエネルギー供給が可能。
    • 安定性が高い: 血糖値の変動に影響を受けにくい。
    • 酸素消費量が多く、急激なエネルギー供給には不向き。

 

 

比較表

項目 ブドウ糖 ケトン体
エネルギー供給速度 高い(速効性がある) ゆっくり(持続的)
効率 ATP産生量は高いが短期間 ATP産生量はやや少ないが持続性
酸素消費量 少ない 多い
適した用途 高強度運動、短時間の活動 持久運動、飢餓時、安静時
利用できるストック 限られる(グリコーゲン枯渇) 豊富(体脂肪から供給)

 

ようは人間のエネルギーはブドウ糖だけではなく、ケトン体も利用できるのです。 

 

皆さんが不要とされている皮下脂肪(中性脂肪)は體的にみると貯金です。 中性脂肪を分解すると10%がブドウ糖、90%がケトン体に合成されます。 

 

ケトン体は脳でもあらゆる細胞でエネルギー源として利用でき、インスリンも不要なためすぐにエネルギーとして利用できます。

 

断食をしてケトアシドーシスになるのかと思いますが、健常人では問題ないようです。

 

糖尿病性ケトアシドーシスとの違い

特徴 糖尿病性ケトアシドーシス(DKA) 断食によるケトアシドーシス

原因

インスリン不足による代謝異常 糖分の摂取不足による脂肪代謝の増加
血糖値 高血糖(>250 mg/dL) 低血糖または正常
ケトン体濃度 非常に高い やや高いが、糖尿病性より低い
血液の酸性度(pH) 酸性(pH < 7.3) 軽度の酸性または正常範囲に近い
危険性 高い(命に関わる可能性) 通常は低いが、長期間の断食では注意が必要

 

糖尿病の人がやると血液が酸性に傾くケトアシドーシスになってしまいます。 これはまずいですので要注意です。

 

ケトン体は今後のエネルギーとして大変注目されてくるものであり、腎臓でもケトン体を再吸収する機能もあるために、適度な食事が必要だろうと思います。 また穀類、炭水化物に頼る現代の食事も見直す必要もあるかもしれませんね。

 

すくなくともケトン体はいいやつです。