補体とは

補体とは

 

補体(ほたい、complement)は、免疫系の一部であり、主に感染防御や炎症反応に関与するタンパク質群です。補体は肝臓で産生され、血液中に存在します。その働きには以下のようなものがあります:

 

  1. 病原体の破壊(溶菌作用)
    補体は細菌やウイルスなどの病原体の細胞膜を攻撃し、穴を開けて破壊します。

  2. オプソニン化
    補体が病原体の表面に付着することで、マクロファージや好中球が病原体を認識しやすくなり、貪食作用を助けます。

  3. 炎症反応の誘導
    補体の活性化産物(C3a、C5aなど)は炎症を引き起こし、白血球を感染部位に集めます。

  4. 免疫複合体の除去
    補体は抗原-抗体複合体を溶解または除去し、炎症や免疫疾患を防ぎます。

  5. 抗体依存的な免疫効果の増強
    抗体が補体と協力して、病原体の除去を効率化します。


補体が低下する(低補体血症)と関連する疾患

補体が低下すると、免疫系の防御能力が弱まり、感染症や免疫関連疾患のリスクが増加します。代表的な疾患は以下の通りです:

 

1. 感染症

補体低下により、特に以下の病原体に対する防御が弱まります:

  • グラム陰性菌(Neisseria属など、髄膜炎菌や淋菌など)
  • 化膿菌感染症

 

2. 自己免疫疾患

  • 全身性エリテマトーデス(SLE)
    SLE患者では補体(特にC3、C4)の消費が増加し、低補体血症を呈することがあります。免疫複合体が補体を消耗するためです。
  • 血管炎(クリオグロブリン血症性血管炎など)
    補体が関与する免疫反応が血管炎を引き起こします。
  • 関節リウマチ
    補体が慢性的に消費される場合があります。

 

3. 腎疾患

  • 急性糸球体腎炎(特に溶連菌感染後)
    補体活性化が腎臓の炎症を引き起こし、C3低下が見られることがあります。
  • 膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)
    補体が持続的に消費されることで低補体血症になります。

 

4. 遺伝性疾患

  • 遺伝性血管性浮腫(HAE)
    補体C1エステラーゼ阻害因子の欠損により補体が過剰に消費され、低補体血症を引き起こします。

5. 補体異常に起因する血液疾患

  • 発作性夜間血色素尿症(PNH)
    補体が赤血球を攻撃しやすくなり、溶血が起こります。

補体の異常が疑われる場合には、補体価(C3、C4やCH50)の測定が診断に役立ちます。

 

以上の疾患は低補体になるとおこる疾病です。 肝機能が低下して補体の生産が低下しているということは肝機能を高めれば、以上の疾患が改善する可能性が高いということになりますね。