バクテリアトランスロケーションとは
バクテリアトランスロケーションとは
バクテリアトランスロケーションとは、腸内細菌(主に腸内の常在細菌)が腸管粘膜を通過して、通常は無菌であるリンパ節、血液、肝臓、脾臓などに移動する現象を指します。これが免疫系の反応や全身性の感染症(敗血症など)を引き起こす場合があります。
バクテリアトランスロケーションの概念は、1970年代から1980年代にかけて研究が進む中で確立されました。特に、腸管のバリア機能が損なわれる状況下での細菌の移動が注目されるようになり、そのメカニズムや影響が臨床および基礎研究で明らかになりました。
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腸管バリア機能の障害
- 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病など)
- 化学療法や放射線療法
- 手術後の腸管損傷
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免疫力の低下
- がんやエイズなどの免疫抑制状態
- 栄養失調や重度のストレス
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腸内細菌叢の異常(ディスバイオーシス)
- 抗生物質の過剰使用や腸内環境の乱れ
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腸管内の過剰な細菌増殖(SIBO)
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- 小腸での異常な細菌増殖
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重症疾患やショック状態
- 多臓器不全、敗血症、熱傷、大手術後のストレス状態
バクテリアトランスロケーションを放置すると、以下のような深刻な合併症が発生する可能性があります:
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全身性感染症(敗血症)
- 細菌やその毒素が血液中に入り、全身に広がることで致命的になる可能性があります。
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多臓器不全
- 感染症が進行し、主要な臓器(肝臓、腎臓、心臓など)の機能が損なわれる。
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慢性炎症
- 全身性の炎症が進行し、病気の慢性化や他の疾患のリスクが高まる。
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死亡リスクの増加
- 特に免疫が低下している患者では、治療しない場合に死亡率が高まります。
腸内細菌は大切ですねえ。