血管石灰化におけるケルセチン治療の有益な効果に関する新しい in vitro 証拠

血管石灰化におけるケルセチン治療の有益な効果に関する新しい in vitro 証拠

 Frontiers in pharmacology. 2024;15;1330374. pii: 1330374.

 

   【ケルセチン】

ケルセチン

血管石灰化は、血管壁へのカルシウム結晶沈着を特徴とする病理学的慢性病態であり、アテローム性動脈硬化症、慢性腎臓病、糖尿病において繰り返し起こる。

 

効果的な治療法がないことから、様々な実験モデルにおいてこの病的プロセスを抑制する有望な可能性を示している天然物への研究が始まった。

 

本研究では、無機リン酸溶液で7日間処理した血管平滑筋細胞(VSMCs)に対するケルセチンとベルベリン抽出物の抗石灰化作用を調べた。

 

ケルセチンは、細胞内定量アッセイと形態学的解析によって明らかにされたように、最も高い抗石灰化活性を示した。

 

共焦点顕微鏡観察により、石灰化表現型の重要なマーカーであるRUNX2のダウンレギュレーションが明らかになった。

 

ケルセチンの抗炎症活性を調べるため、培養液を免疫測定に供し、IL-6とTNF-αのレベルとカスパーゼ-1活性を定量した。

 

予想通り、石灰化血管平滑筋細胞(VSMCs)は大量の炎症性メディエーターを放出したが、ケルセチン存在下では有意に減少した。

 

まとめると、ケルセチンは血管平滑筋細胞(VSMCs)の病的な表現型の転換を抑制し、炎症反応を軽減することによって石灰化に対抗することが示唆された。

 

我々の考えでは、これらのin vitroにおける予備的な知見は、血管石灰化に対するケルセチンの食事補充による有益な効果に関するさらなる研究の出発点となる可能性がある。

 

血管石灰化はまだまだ一般的に医療業界では言われていないけど、学術的には確実に存在する現象です。

しかし薬は何もありません。

 

このキーワードがRUNX2(RUNTーlelated transscription factor2)で骨形成にかかわる重要な転写因子です。

 

RUNX2と血管石灰化の関係:

血管平滑筋細胞の骨芽細胞様分化: 血管石灰化は、主に血管平滑筋細胞(VSMC)が骨芽細胞様に変化し、カルシウムやリン酸塩が蓄積することによって引き起こされます。この過程で、RUNX2はVSMCの骨芽細胞様分化を誘導し、石灰化の進行を促進します。RUNX2の発現が上昇すると、骨形成に関連する遺伝子の発現も増加し、結果として石灰化が進行します。

 

石灰化抑制機構の破綻: 正常な血管では、骨形成を抑制するメカニズムが働いていますが、炎症や酸化ストレス、糖尿病などの病的条件下ではこれらのメカニズムが破綻し、RUNX2の発現が増加します。この結果、異常な石灰化が促進されることになります。

 

臨床的意義: 動脈硬化や慢性腎臓病など、血管石灰化が進行すると心血管疾患のリスクが高まります。RUNX2はそのプロセスに重要な役割を果たしているため、RUNX2の発現や活性を制御することが、血管石灰化の治療ターゲットとして注目されています。

まとめると、RUNX2は血管平滑筋細胞の骨芽細胞様への分化を促進し、血管石灰化の重要な調節因子として働いています。そのため、血管石灰化の病理学的進行に深く関与していると考えられています。

 

ケルセチンはすごいですね。 RUNX2を減少させることで、IL6 TNF-αなどの炎症物質をさげることが分かったのですから。

 

今開発中の腎臓処方はケルセチンを主剤としているので、全身の血管石灰化に効果が期待できます。 ひょっとすると全身炎症にも効果が期待できるかも。