英語に訳せない日本語シリーズ
英語に訳せない日本語シリーズ
忸怩たる(じくじ)
現代でこの表現をすることはまず聞いたことがないです。 忸怩たる思い。
この忸怩というのは深く恥じ入るという意味ですが、日本が大東亜戦争に負けて、公職追放されてから「恥」という概念まで追放されてしまいました。それ以降「恥」ということは政財界をはじめ消え去ってしまいました。
まさに「恥を知れ恥を!」という感じですが、言われた方は「恥」自体どうでもいいのでピンとこないでしょう。
日本文化は恥文化。 嘘偽りは天が見ているのでという生き方をしてきた民族。
まず根底に恥文化があって、この忸怩が成り立つのではないかと考えています。
以上を踏まえて無理くり英語で表現していくと以下のようになります。
- “I was filled with a deep sense of shame over my actions.”
(自分の行動に対して深い羞恥心を感じた。) - “It was a moment of painful self-awareness that made me blush with embarrassment.”
(痛みを伴う自己認識の瞬間で、恥ずかしさに顔が赤くなった。)
これでも十分に表現しているとはいえないですが、近い表現にになります。
英語には恥じ入るという前提がないので、忸怩たる思いが実に説明しにくいでしょう。
このように日本語というのは言葉に様々な背景、意味、情景、感情文化、などを盛り込んでいるので、実に短い単語で360度方向の意味が盛り込まれています。
本来の意味は「恥じ入るような思い」ですが、現代では「残念でもどかしい思い」に変化してきているそうです。
「忸怩たる思い」このような表現は現代ではほぼしませんが、意識して使ってみたいと思います。