重力を感じる細胞とは

重力を感じる細胞とは

 

生物が重力という物理刺激を感知して反応する能力(= 重力感受性)を担う細胞のことです。これは、動物・ヒトにも、植物にも見られます。以下、それぞれに分けて解説します。


✅【1】ヒトや動物の「重力を感じる細胞」

主に**内耳の前庭器官(ぜんていきかん)**に存在します。

● 場所:内耳の「耳石器(じせきき)」

  • **耳石器は、前庭にある「卵形嚢(らんけいのう)」と「球形嚢(きゅうけいのう)」**で構成されます。

  • ここに、「耳石(じせき)」というカルシウムの結晶と、それを感知する**有毛細胞(ゆうもうさいぼう)**が存在します。

● 有毛細胞のしくみ

  • 有毛細胞には細かい毛(=感覚毛)が生えており、上に耳石膜というゼラチン状の膜が乗っていて、その中に耳石(カルシウムの粒)が入っています。

  • 体が動いたり、傾いたり、重力が加わると、耳石膜が動いて有毛細胞の毛が曲がります。

  • この曲がりが神経信号に変換されて「今、身体がどの方向にあるか」「傾いたか」「加速度があるか」を脳に伝えます。

➤ つまり:

  • 有毛細胞が「重力(および加速度)」を感じ取るセンサー

  • 重力によって耳石が動き、その力が機械的刺激として毛細胞に伝わることで、重力感覚が生まれる


✅【2】植物の「重力を感じる細胞」

植物にも重力感受性があり、これを**「屈地性(くっちせい)」**といいます。

● 重力を感知する細胞:

植物では主に以下の細胞が重力を感じ取ります:

  • 根冠(こんかん)細胞:根の先端にある

  • 茎のシュート頂端:成長点近くにある細胞

● 構造:スタトリス(statolith)

  • **スタトリス(重力小体)**は、**アミロプラスト(でんぷん粒)**からなります。

  • 重力に従って細胞内でアミロプラストが沈み、これが細胞内の構造に機械的刺激を与え、重力の方向を感知する。

➤ つまり:

  • アミロプラストの沈降が、細胞内の構造(特にエンドメンブレンなど)に圧力を与えることで、重力方向がわかる。

  • この情報をもとに、植物は根は下へ、茎は上へ伸びる成長制御を行う。


✅ 補足:宇宙での重力感知細胞の研究

  • 宇宙空間では無重力状態で、ヒトでも植物でもこれらの重力感受系が正常に働かず、空間識失調(宇宙酔い)や、植物の成長異常が起こります。

  • そのため、NASAやJAXAでは重力感知細胞の機構解明が重要なテーマになっています。