山茱萸エキスパウダー

山茱萸エキスパウダー

 

学名 Cornus officinalis の果実から抽出したエキスパウダーです。

 

山茱萸は夜間頻尿で有名な八味地黄丸の構成生薬です。 食薬区分では食品扱いですが、日本ではほとんど使用されていない生薬です。

 

有効成分はロガニン、モロニシドなどです。

 

弊社が注目しているのは転写因子であるE2F1の活性抑制作用です。E2F1という転写因子は抗がん作用として研究されていますが、弊社が注目しているのは前立腺肥大への作用です。

 

根拠となる論文はこれです。

〇HBX-6(標準化されたCornus officinalisおよびPsoralea corylifolia L.抽出物)は、E2F1活性化を弱めることにより良性前立腺肥大を抑制します。

Molecules (Basel, Switzerland). 2019 May 02;24(9); pii: 1719.

 

 

このE2F1活性とは何か?ですが、以下簡単に整理しておきます。

 

1. E2F1の基本的な働き

  • 細胞周期制御

    E2F1は主に G1期からS期への移行を促す転写因子で、DNA合成関連遺伝子(DNAポリメラーゼ、チミジンキナーゼ、サイクリンEなど)を発現させます。

  • Rb(Retinoblastoma)タンパク質との関係

    Rbがリン酸化されていないとE2F1を抑制し、細胞周期は停止します。Rbがリン酸化されるとE2F1が遊離し、細胞周期が進行します。

  • アポトーシス誘導

    過剰なE2F1活性化はp53経路を介してアポトーシスも誘導しうるため、「細胞増殖促進」と「細胞死誘導」の両面があります。


2. 前立腺肥大との関係

前立腺肥大は「前立腺上皮細胞・間質細胞の過剰増殖」と「アポトーシス抑制」のバランス異常で進展します。

  • 増殖シグナルの亢進

    BPH組織ではアンドロゲン受容体(AR)シグナルや成長因子(TGF-β, IGF, FGFなど)の活性化により、Rb/E2F1経路が活性化 → 細胞周期が促進 → 前立腺細胞が過剰に増殖。

  • アポトーシスの回避

    本来ならE2F1が過剰に働けばp53依存性アポトーシスが起きるはずですが、BPH細胞では抗アポトーシス因子(Bcl-2、survivinなど)が高発現しており、E2F1の「細胞死誘導作用」が抑え込まれています。

  • 慢性炎症との関連

    前立腺肥大組織では炎症性サイトカイン(IL-6、TNF-α)が多く、NF-κBやSTAT経路とクロストークし、E2F1を介した増殖がさらに強化されます。

 

 

PCNA / E2F1依存性細胞周期経路を介した良性前立腺上皮細胞に対する標準化されたサンシュユの抗増殖効果。

Anti-Proliferative Effects of Standardized Cornus officinalis on Benign Prostatic Epithelial Cells via the PCNA/E2F1-Dependent Cell Cycle Pathway.

International journal of molecular sciences. 2020 Dec 15;21(24); pii: E9567.

この文献は前立腺肥大の直接増殖作用を防ぐことが証明されています。

 

 

近いうちに前立腺肥大処方に配合したいと考えています。 脂肪肝になるとインスリン抵抗性があがり糖尿病になり、前立腺肥大を発症してしまいますので、脂肪肝を治療させることもとても大切なことにになります。

 

 

以下それ以外の面白そうな論文の紹介です。

 

〇モロニシドは腎臓のグルコース再吸収を抑制し、PPARδ/SGLT2 シグナル伝達経路を介してグルコース代謝を調節します。

Journal   Biochemical and biophysical research communications. 2025 Mar 08;752;151399. doi: 10.1016/j.bbrc.2025.151399.

 

〇モロニシドは、NF-κB/MMP経路を介して関節リウマチ滑膜細胞の浸潤を阻害することで関節リウマチを軽減します。

Journal   Annals of clinical and laboratory science. 2024 Sep;54(5);604-617.

 

〇山茱萸 の果実から単離されたロガニン、モロニシド、ウルソール酸の血糖降下作用と相乗効果。

Phytotherapy research : PTR. 2016 Feb;30(2);283-91. doi: 10.1002/ptr.5529.